ライアン・レイノルズ&ケネス・ブラナー「メーデー」インタビュー

INTERVIEW:P.G. BRUNELLI/MOVIE STAR
過酷で特殊な仕事には、
ある種のユーモアが必要になるんだと思う(ライアン)
「メーデー」はとても楽しい映画だ。いや、冷戦時代を舞台にした政治映画を“楽しい”と表現するのは、間違ってるかもしれない。しかし、ライアン・レイノルズが出ている作品ならやっぱり楽しいし、本作も例外ではない。もちろんドラマもちゃんとあるが、ライアン演じるドライなユーモアを持つハイテンションなキャラクター(トロイ)と、ケネス・ブラナー演じる一見冷たそうだが実はそうでもない、ひと癖あるキャラクター(ニコライ)の組み合わせが、本作の最大の魅力になっている。手に汗握るほどスリリングなのに笑えて、政治色が強いのに人間味もある、そんな作品だ。このインタビューでもライアンは相変わらずおもしろい。そんな社交的な彼に引っ張られるように、ケネスも終始楽しそうにしていた。
―本作の中で、トロイがニコライに“アメリカ人のように振る舞え”と言うシーンがありますが、そもそも“アメリカ人のように振る舞う”とは、どういうことなのでしょうか?
ケネス・ブラナー:僕が演じるニコライはずっと孤立してきたし、まるで追放されたような状態で生きてきたんだよね。僕自身も、似たような環境のベルファスト(北アイルランド)で子供時代を過ごしたわけなんだけど、アメリカ文化やアメリカ映画は、そんな僕に物凄く大きな影響を与えたんだ。家族と映画館に行って、大きなスクリーンで観る映画は、当時の自分にとって本当に大きな存在だったし、自分の心にとても強い印象を残したんだよね。そんなわけで、ニコライみたいな人にとって“アメリカ人らしく振る舞う”というのは、アメリカ人の真似をすることではなくて、“自分の夢を生きること”なんじゃないかと思う。自分がどんな人間になりたいのか、そして、どんな人生を望んでいるのかを考えて、その夢を実際に生きてみるっていうね。アメリカは、物事を可能にしてくれる存在だからさ。僕は今、ちょうどシェイクスピアの芝居をやっていて、その中で、ある登場人物が“人は夢からできている”みたいなことを言うんだけど、ニコライにとってアメリカ人というのは、まさにそういう存在なんだと思う。“夢を実現することは可能なんだ”と思わせてくれる存在っていうね。
ライアン・レイノルズ:僕はカナダ人で、ケン(ケネス)はイギリス人で、どちちもアメリカ育ちではないんだよね。そんな僕らにとって、アメリカというのは、子供の頃からずっと憧れの対象だった。何もかもがもっとキラキラしていて、もっと大きくて、もっと高価に見えてね。もちろん今は、そんなアメリカにももっと複雑ないろんな面があることは分かってるし、どんな場所にも、英雄もいれば悪役もいて、いろんな人たちがいることも分かってるんだけど、とにかく、僕はずっと、アメリカには人々を惹きつける大きな力があると思ってたんだよ。一方、カナダにはもっと控えめな文化があるから、その両方の要素を融合させたら、そこからかなりおもしろい人間が生まれる気がする。
僕はライアンから沢山のことを学んだし、未知の世界にも
思い切って飛び込んでいくことの大切さを学んだ(ケネス)

―ライアンのコメディはスピード感と、とっさの切り返しから生まれることが多く、一方、ケネスのコメディはもっと精密で、どこか演劇的な要素があるように感じられます。本作では、それぞれの持ち味を失わずに、どうやって共通のリズムを見つけていったのでしょうか?
ライアン:僕はこういう映画を、ふたりの人間のダンスのようなものだと考えてるんだ。どちらか一方のやり方に、もう一方が合わせるんじゃなくて、ふたりで一緒に最高のものを作るっていうことが大事なんだよね。僕自身、そういう仕事の仕方が好きだし、とにかく、水の中で揺れる昆布みたいに、お互いに合わせて動いていくんだよ。そうすると、それがとても美しいダンスになるんだ。それに、ケネスは、僕からすると、人間の姿をしたスイス・アーミーナイフのような人でね、中には何百万もの仕掛けが入ってるんだ。危ないくらい鋭いものもあれば、はっとさせられるような新しい発見が飛び出すこともある。彼のようなキャリアの持ち主って本当に珍しいと思う。40年にわたって、いろんな分野において素晴らしい仕事をしてきてるわけだけど、今なお新鮮な驚きを与えてくれる存在で、そういうところが本当に凄いと感じるよ。みんなの期待を、あらゆる意味で軽々と飛び越えていくし、そんな彼を、2カ月半~3カ月もの間、最前列で見られたことは、一生忘れない。まさかこうして今も友人でいられるなんて夢にも思わなかったし、それもこの仕事がくれた最高の贈り物のひとつだと感じるよ。
ケネス:僕らの場合、最初からとても相性がいいということが分かったんだ。“気が合うな”とか“彼とならスムーズにやれそうだな”とか、そんなことをわざわざ確認するまでもなく、最初からしっくりきたっていうね。だから、あれこれ深く考えすぎる必要はなかったし、普通にサッカーの話をしたり、映画の話をしたり、シーンについて話したりしてるだけで凄く楽しかったんだ。そして、僕が驚いたのと同時に感心したのは、ライアンがシーンの中で見せる圧倒的な存在感だった。俳優としてだけじゃなくて、彼という人間そのものにも言えることなんだけど、彼は本当に人の話をよく聞くし、常にその瞬間にしっかりいることができる人なんだよね。そこがとても大きな魅力だと思う。しかも、あの時の彼は相当忙しかったはずなのに、そんなことは少しも感じさせなかった。ただ、しっかり準備を整えて、その場にちゃんといる人だったっていう。つま先から頭のてっぺんまでちゃんとその場にいられるというのは、俳優としてかなりの才能だと思うし、観客にもちゃんと伝わるものだと思う。逆に、中身が空っぽだと、それもすぐに伝わってしまうしね。とにかく、僕はライアンから沢山のことを学んだし、未知の世界にも思い切って飛び込んでいくことの大切さを学んだよ。本作では、実際に、列車や車から飛び降りたりもしたけど、撮影中は、何が起こるか分からないところへ思い切って飛び込む瞬間も沢山あってね。あらかじめ決められたことだけをやるんじゃなくて、その場で自然に反応して、遊び心を持って、楽しむ。そして、相手の演技を受けながら、自分もそこに応えていく。そうすることで、ふたりのキャラクターの間に、自然な楽しさや喜びが生まれていくんだよね。とにかく、ライアンは、僕よりずっと即興が得意だし、そんな彼と仕事したことで、何が起こるか分からなくても、恐れずに全ての瞬間に飛び込んでいくことの大切さを学んだし、それを観客にも自然な形で届けられたらいいなと感じたよ。とても刺激的かつ魅力的な体験だったね。
―本作には、ストーリーの緊張感を和らげるようなユーモアが全体を通して存在しているように感じましたが、それもおふたりにとって魅力のひとつでしたか?また、最後の“ass ass in”がとても笑えましたが、これは誰のアイディアだったのでしょうか?
ケネス:誰のアイディアだったと思う?僕は、隣に座ってる共演者を指差してるけど(笑)。
ライアン:(笑)。実は、その前に、別のアイディアがあったんだけど…まず最初に言っておきたいのは、この脚本が最初から本当に良くできていたってこと。かなり完成度の高い状態で届いたんだよ。ただ、最初、コードネームが別の物で、何だったかはもう忘れちゃったんだけど、少し誤解を招きそうなもので、それで、別のものを考えられないかってことになって、みんなで色々アイディアを出し合ったんだよね。で、いろんなやり取りを経て、最終的に“Assassin”に落ち着いたんだ。ユーモアについてだけど、実際に、こういう世界にいる人たちって、かなりブラックユーモアを使うものなんだよね。少なくとも、僕が知る限りではそう。生きるか死ぬかみたいな場面にいると、頭を緊張状態から切り替えるのって難しいし、だからこそ、ユーモアが必要になるんだと思う。実際に、僕の兄は殺人課の刑事で、父も警官だったんだけど、どちらも本当に重い仕事なんだよね。でも、兄は、とても捻りのある話し方をするし、物凄くおもしろい人なんだ。それは、どんなにひどいものを目にしたとしても、家に帰って泣いているわけにはいかないからなんじゃないかな。つまり、そういう過酷で特殊な仕事には、ある種のユーモアが必要になるんだと思う。
―戦闘機パイロットと元KGBエージェントを演じるにあたって、どのような身体的なトレーニングや、精神的な準備をされたのでしょうか?
ケネス:いい質問だね。この作品での身体的なトレーニングは、僕にとっては、とてもハードなものだったけど、素晴らしいスタント・チームのお陰で、楽しくもあったよ。僕の場合、シェイクスピアの舞台を通して、かなりの時間を人と戦うことに費やしてきたから、こういうことは怖くなかったよ。でも、何よりも興味深かったのは、このような命がかかった状況で、人がどう考え、どう動くのかということだった。いかに無駄な動きを減らして、いかにすばやく動くか…。一瞬の判断が生死を分けるような人たちにとって、それがどういう意味を持つのか理解するのは、本当に興味深かったね。だから、僕にとっては、これまでとは全く違う精神状態に入っていくこと自体がとても新鮮だったと言えるし、そういう点を楽しみながら、興味深く取り組むことができたよ。
ライアン:僕はなぜか、これまでに戦闘機パイロット役を5回くらいやってきたんだけど、実生活では、飛行機が大の苦手でね(苦笑)。だから、正直に打ち明けるけど、実際に、何万フィートもの上空で訓練するようなことはなかったよ。僕には到底無理なことだからね。と言っても、僕は一度もトム・クルーズのようになろうとしたことはないし、それはこの先もないと思う。もちろん彼のことは大好きだけどね!■

アクション・コメディ映画「メーデー」
Apple TVにて配信中
作品紹介
冷戦時代、米軍パイロットのトロイ(ライアン・レイノルズ)はソ連上空を飛行中、爆撃に遭い荒野に不時着。元KGBのロシア人ニコライ(ケネス・ブラナー)の助けを借りて敵地脱出を試みるが…。「デッドプール」シリーズのライアン・レイノルズと「オリエント急行殺人事件」(’17)のケネス・ブラナー共演のアクション・コメディ。
監督・脚本・製作:ジョン・フランシス・デイリー、ジョナサン・ゴールドスタイン
出演:ライアン・レイノルズ、ケネス・ブラナー

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